wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

宮本常一『日本人のくらしと文化』

週末は公募書類書きに費やしたが終わらず。大学によって微妙に違って流用できず、その上に共著者の名前という指示がありいちいち本を引きずり出さなければならなかった。万一当たってももはや「学問の府」ととしての環境は失われてしまうようだがhttp://www.asaho.com/jpn/bkno/2014/0609.html。とにかく気を取り直して電車読書は久しぶりに宮本常一。78年から85年までの著作で、離島振興・周防猿回し復興など実践者としての各地での講演がまとめられているが、とにかく力強く前向きなエネルギーにあふれている。高度経済成長を経てすでに過疎化に直面していたとはいえ、補助金による産業振興で自立できるという「地方の時代」の産物と言ってしまえばそれまでなのだが、まだまだ希望や可能性が実感できたのも事実なのだろう。また歴史に遡って外の世界とのつながり、人と人の結びつきが強調されているのも興味深い。また最後の章は宮本への聞書で、戦前・戦後の調査・実践を通じて関西の風土が述べられている。北側と結びつく京都と大阪の意外に遠い距離、大阪平野の在郷町の重要性などが、借地制と小作、奉公による結びつき、牛預け慣行など興味深い事例から説明され、戦後直後に周辺農村からいかに食糧を調達したかという実体験も記されていた。昭和30年代に大阪の問屋制度が解体し東京本社化することで急速に解体していったということだが、それ以前の慣行がどれだけ調査されているのだろうか。またその一部は戦国まではさかのぼる可能性があるのではないか。やはり宮本の集めた事例は人やモノのつながりを探る歴史にとって重要な史料であることが再確認できたhttp://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309412405/