wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

古関彰一『日本国憲法の誕生増補改訂版』

本日はルーティン姫路。ようやく禅僧の名前がつながり始めたがまだまだ先は遠い…。相変わらず電車はほぼ爆睡しているが、ようやく表題書を読了https://www.iwanami.co.jp/book/b285388.html。本年の211講演で大変興味深いさわりが語られており、詳細は新刊を参照してくれとのことだったので、購入してみたもの。45年9月4日の天皇の「平和国家の確立」勅語・旧日本軍幹部の間で早くから軍解体という提案があり、GHQ案の天皇制存続と戦争放棄という骨子を受け入れる前提が日本側にあったこと。ただし当初のGHQ案は戦争の「廃止」(奴隷制の廃止と同義で、核廃絶でも同様の用語が用いられる極めて理念的・絶対的なもの)だったが、なし崩し的に「放棄」に代わっていったこと。ただしこれは沖縄への米軍駐留が前提で、日本側も戦後最初の衆議院選挙を適用除外にするなど当初から見捨てられていたこと(211講演でもっとも衝撃をうけた部分だったが、これについては別に豊下楢彦氏との共著が予定されているとのことで、余り深入りされていなかった)。憲法研究会が早くからGHQに注目され英語に翻訳された一方で、民法の専門家として「自信家」だった松本烝治は敗戦後の情勢についてほとんど理解していなかったこと。戦後に流布している幣原による戦争放棄提案・芦田による軍備保持のための二項変更は完全な誤りであることが論証されるとともに、後者については議事録の秘匿などで意図的に吹聴された形跡があること。ただし二項修正に官僚が再軍備の意味を込めたことは事実で(芦田は全く気づいていなかった)、それを見抜いた極東委員会の中国・カナダの巻き返しで文民条項が加えられたこと。その他にも官僚は外国人人権条項を削除するなど、法技術と翻訳のマジックを使って「日本化」を果たす一方で、25条など社会党議員の修正による成果もあったことなど。GHQと米政府の確執、天皇の影・憲法研究会・宮沢俊義などの憲法学者・各政治家など多様なアクターによる絡み合いによる憲法制定過程を浮かび上がらせており、非常に興味深い。その一方で早くから旧植民地・沖縄を切り捨てた「単一民族国家」的な構想がどこから生まれ、ある種の共通認識になっていたのかが、今後の最大の課題で、天皇周辺が想像以上に大きな役割を果たしていたのかも知れない。なお講義で予定している農村恐慌と戦時体制に関する借り物読書モードに入るため、電車読書はしばらく中断の予定。政治情勢にもいろいろ言いたいこともあるのだが、大学教員の姿勢への絶望のほうがより強いのが現状。