wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『翻刻明月記一』ほか

先週末締切の公募書類をようやく出したら、またもや寝込んでしまうというぐだぐだな状況。せっかく涼しくなったのだが、電車に乗らない・人に会わないという生活がひたすら続くと、リズムの狂いは修正できない。まあ今週後半から少し予定が入り、来週末には内輪とはいえ研究報告も控えている。そういうなかでとりあえず夏休み読書の整理だけしておきたい。表題は図書館から借りだし、ようやく気になる部分のみだがデータ化できたものhttp://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=13269国書刊行会本は以前に作業していたが、かなりの字句が修正されるとともに、新翻刻も多数ある。もともと現存日記の多数は摂関家もしくは職事・弁官クラスのもので、それと異なる定家の日記は人事への強い関心は別にして、政務(儀式)の記録が乏しくかなりその視点は異彩を放っているのだが、今回改めて感じたのはその行動力。日吉参籠・後鳥羽水無瀬殿への祗候・嵯峨滞在など極端な時には月の半分以上は自宅以外の宿所で就寝するとともに、日吉・石清水などへの日帰り「弾丸旅行」も多く、当方の怠惰な生活とは正反対。それを規定している条件の一つが後鳥羽の行動で、年の半分も京中にいないのではないかという感触で、後白河以前の院政と比べてもかなり極端ではないか。欲を言えば、定家がもう少し地域の実態を書いてくれればありがたかったのだが、いろいろ勉強にはなった。秋には写真で未翻刻部分も確認する必要がありそうだ。なお地域といえば神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター編『「地域歴史遺産」の可能性』も、最先端の取り組みと地域史の方法をいろいろ学ばせてもらったhttp://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN978-4-87294-816-5.htm。世間では東大先生の日本論が話題のようだが(未読)、地域の実像から出発する以外に日本史学の将来はないと改めて感じられたもの。貴族日記への当方の関心ももっぱらそれに収斂されるようになっている。