wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

神戸市立博物館「特別展平清盛」

投げ売りでチケットを購入していたこともあり、金曜日は山田荘見学の後は神戸市立博物館で行われていた表題の展覧会に寄るhttp://www.city.kobe.lg.jp/culture/culture/institution/museum/tokuten/2011_04kiyomori.html。まず会場で驚いたのが客の多さで、春休みとはいえ平日の昼間のレベルではなく、絵画史料などは熟覧するのが憚られるほど人が連なっていた。また展示とは無関係にドラマの登場人物の解説が記され、それを熱心に読んでいる観客も見られた。視聴率低迷が報じられているとはいえ、やはりその宣伝効果の巨大さには驚かされるものがある。ただし内容は予め出品目録で確認していた通り、たいしたものはとはいえなかった。どういうわけか同時代のものは圧倒的に前半のみの展示で、戦国以後の絵画史料がかなりの量を占めていた。信西の首らしきものを三宝にのせた近世の絵巻には爆笑させられ(どうも切腹の作法と関わるらしい)、須磨寺の清盛像が天正のものというのは由緒論からは興味あるところだが、一般の観覧者は清盛の時代とはかなり異なったものであることを認識しているだろうか。文献史料も『兵範記』・『長秋記』など一部は見所があったが、かなり近世の写本も混じっており、恐らく読みやすさから選択されたものだろう。そのくせ院庁下文の釈文に□記号が点在していたため確かめてみたところ、古文書読解能力の低い当方でも普通に読める字で、どうせ誰も読まないからという意識なのか唖然とさせられる。とかく博物館をとりまく情勢が厳しい中で、宣伝効果だけで高額な入場料にもかかわらず、この程度の展示で集客があるのはどうしても違和感が残る(同博物館では一昨年春に行われた「海の回廊」のほうが遙かによいものが出ていた)。巡回展らしいのでせめて釈文ぐらいは訂正すべきだろう。久しぶりにドラマのほうも45分まるまる見たが、何といえばよいのか分からない。強訴阻止に動員されていない設定で屋根の上から矢を放ちどうしたらバレるのか。検非違使庁はもう存在しないし(別当邸)、いきない殿上人クラスが押しかけられると迷惑だろう。そもそも強訴の流罪は形式の問題で(平信範は配流出発時の日記まで残してくれている。備前までの旅程も残っていればよかったのに・・・)政治的浮沈とはほぼ無関係。時代像も一貫した歴史観もなく(先週はあの清盛の設定で頼朝に「田舎武士」と悪口を言っていた)、その場の思いつきだけで展開していてあきれるばかり。