wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

元木泰雄・松薗斉編『日記で読む日本中世史』

今日の奈良で今期の授業は最後、試験は3つが採点も含めて終了しあと3つ残している。電車読書のほうは、日記史料についてわかりやすく記した序章、中世前期、南北朝・室町期、戦国期の三部構成にそれぞれ編者による解説、『中右記』から『駒井日記』までの16の日記を15人の著者がそれぞれの独自の視点から取り上げた本編、4つのコラムからなるものhttp://www.minervashobo.co.jp/book/b93393.html。なかでも出色なのが市沢哲氏による『花薗天皇日記』論で、有名な網野説が鮮やかに批判されており蒙を啓かれた思い。また学部時代からあつかっていて基本情報をそれなりに理解している前期の日記と異なり、最近になって読み出した後期の日記は記主のことなど基本情報をほとんど理解していなかったため、はじめて知ることも多く大変勉強になった。ただ私自身はなり立たないと思っている見解について肯定的に評価されていたのには驚かされた。そういえば一年近く前に依頼により書いた書評は全く音沙汰がなく、お蔵入りにされたのかもしれない。あれが通説になるのはまずいと思うのだが・・・。