wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

太田昌克『日米<核>同盟』

ようやく不完全ながら月曜日のレジュメを仕上げて、印刷もすませた。昨今はA3が一般的になっているが、格安コピー店ではB4まで5円・A3は10円と倍違うため、縮小をかけてB4にした。そんなこんなで昨日読了した電車読書の備忘http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1408/sin_k782.html。前半部分は核密約問題の再説だが(それでも外務省幹部へのインタビューを通じて、密約文書が1999年以後の2009年調査までの段階で廃棄されたことが明らかにされている)、後半部分はアメリカの核不拡散政策と日本政府の核燃サイクルとの軋轢が歴史的に論じられており、大変興味深い。インドが民生用原発から核燃料を取り出して核実験を行ったことから、カーター政権は核燃サイクルに否定的だったが、これを潜在的核兵器保持能力とみて「生死」の問題とする福田内閣がそれを押し切ったこと。続くレーガン政権はそれに頓着せず日米原子力協定に応じた結果、現代日本核兵器非保持国としては突出した44.9トンのプルトニウムを貯蔵していること。その一方で国策民営で実施されてきた事業は莫大な費用をつぎこみ、2004年には経済産業省若手官僚が「19兆円のムダ」と題する再処理からの撤退案を打ち出していたこと。しかし責任の所在を明らかにしたくない「原子力ムラ」と、独自核武装を目論む政治家によってつぶされたことなどが、関係者へのインタビューを通じて明らかにされており、原発が核政策としてすすめられていたことがわかる。現政権の原発維持政策も明らかに核武装論とリンクしており、2018年の日米原子力協定の有効期限切れ(何れかの国の通告で失効)とともに注視する必要がある。