wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

中村武生『池田屋事件の研究』

本日昼間はまだ14回目の授業で、今年度で最後ということもあり記念にご当地ラーメンを食べるhttp://www.tenrisutaminaramen.com/index.html#TOP。辛みで汗をかいてしまったが味はなかなかのもの。夜は最初の試験でおそらくその影響でアクセスが増加しているようだ。そういうわけで本年度の電車読書もあと残り僅かとなった。日本史上でもっとも個人の動きが複雑で、なおかつその追究に研究上の意味があるのが幕末期のいわゆる志士だろう。私自身は彼らの観念論的な政治談義とその後に構築された体制が好きになれないこともあって敬遠しているが、関心を持つ人びとが多いのは納得できるところである。しかしそれをちゃんと歴史研究の俎上に載せるためには、各地に残る多数の史料の収集(この間も立て続けに某テレビ番組で坂本龍馬西郷隆盛の新出文書が紹介されていた)と史料批判、明治以降の様々なバイアスのかかった史料の扱いなど、困難で時間のかかる作業が必要となる。本書はドラマなどでは有名だが実際にはほとんど研究されていなかった池田屋事件について、襲撃した新撰組会津藩などその背後の動向、襲撃された志士一人一人の動向とその墓の行方、そのきっかけとなった長州藩内部の複雑な動きまで執念深く追求したもので、まさにそうした研究のお手本といえるもの。著者は中学生の時からこの問題に関心を持っていたといい、30年間の努力の結晶で脱帽するばかりhttp://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2881314。同じ頃から歴史研究になりたいと思っていた自分を省みると忸怩たるもの。はたしてこれだけのものを書くことができるのだろうか。