wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

藤井貞和『日本語と時間』

先週の電車読書の残りを、本日試験の採点を一段落してから読了。古典文学に現れる過去時制を示す助動詞(著者は助動辞と表現)である「き」「けり」「ぬ」「つ」「たり」「り」「けむ」とそれらと複合する「時の助動辞」である「
あり」それぞれの用法の使い分けを『源氏物語』などから抽出して、「けむ」「あり」以外の六種が明治の言文一致により「た」に一括されたことが、古典の現代語訳の障害になっているとする。たしかに外国語と日本語が一対一で訳すことができないように、古典語と現代語でも同様の問題を抱えていることは納得できる。和語だけでなく漢文でも同じで、史料の正確な読解には押さえておかなければならないことだろう。このように全体の論旨については学ぶべきところはあるのだが、途中の文章は当方に古典文学への素養が薄いため非常に読みにくい。また先行研究にかなりの異議をはさみながら、「多くの研究者たちの理論的学恩に浴しながら執筆した」が、「学術用語を避けられるだけ避けた」ため、かえって真意が伝わりにくくなっているような気もする。新書媒体に全てを求めるのは酷なのかもしれないが、問題点として指摘しておくhttp://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1012/sin_k563.html。それにしても今年は寒い。年をとったせいもあるが、洗い物の水がとてつもなく冷たく、床を歩くのもこごえるほど。おまけにいつもなら今頃は試験の採点を終えているところが、受講者数でいうとまだ五分の一しか試験が終わっておらず、今週がピークとなる。15コマになって延びたためだが、じっくり論文に取り組めるのは二月半ばになりそうだ。