wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

岡倉登志『アフリカの植民地化と抵抗運動』

先日の飲み会で電車に乗った際に読了した山川リブレットシリーズの一冊。このシリーズは価格は新書より少し安いくらいで、分量は新書の半分以下で、高校生向きということらしい。両シリーズともに全巻ではなく、気が向いたら購入しているが(頂き物も三冊?)、制約がきついことで逆に著者のセンスを知ることができる。すなわち単なる概説や個別論文を簡単にしただけのようなものもあれば、一つの事例から思いがけない広がりを見せた作品や、斬新な切り口で全体像を切り取った作品に出会うこともある。そこで本書はというと詰め込みすぎた概説という感が否めない。19世紀末の列強による「アフリカ分割」だけでも多数の事例に触れられ、それに加えて第二次大戦後のケニア「マウマウ」運動(「マウマウ団」ではないらしい)やパン・アフリカ運動まで取り上げられており、一つに割かれているのは長くても3ページ程度にとどまっている。しかも単純な帝国主義対抵抗運動という図式ではなく、列強側・運動側内部の対立面にも触れられているため、余計に複雑で詳しい解説がないとわからない。かろうじて読み取れたのは、それ以前から西欧との接触で重火器類を手に入れて強大化していた勢力と、それに圧迫を受けていた勢力との対立構図があり、そこに列強の資源獲得・入植・課税などの思惑が重なりながら進行していったということのようだ。「アフリカ分割」は後期の人類の歴史でも取り上げることになるため、少しでも活かせればと思うhttp://www.yamakawa.co.jp/product/detail/1853/。明日から最後の夏休みツアー。ようやく少し涼しくなったと思ったら雨の予報で、山城がどうなるかというところ。それが終わると後期の授業が再開となる。