wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

河内将芳『落日の豊臣政権』

昨日は実家の様子見。正月からまたまたワン・ステージ進んだようで、介護が現実味を帯びてきたようだ。接続も悪く時間がかかったが、おかげで電車読書だけは進んだhttp://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b214110.html。文禄期の京都・奈良の世情について、「ならかし」という奈良町民への強制貸し付けと利息徴収。淀君懐妊情報がもたらす異様な緊張感。対外戦争からの逃亡者への探索と町からの誓詞強要。三条川原でのみせしめとしての処刑の始まり。組織的な辻斬りの意味。声聞師の大量追放から狐狩りへ。その背景としての夫不在中の女房の行状問題。秀次周辺への大量処刑。帰結としての浅間山噴火・大地震といったトピックを紹介することで、かつて肯定的に捉えられていた「明るい桃山文化」の闇の部分を浮かび上がらせたもの。いつも書いているが、当方の何十倍もお忙しいはずなのに、相変わらずの精力的なお仕事には感服させられる。しかも丁寧に史料をたどりながら、新しい側面を浮かび上がらせるという、やっつけ仕事では絶対にできないもので、著名な研究もあざやかに批判されている。某書評などいくつかで書かれていることが、こういう形でつながっていくのかと感嘆。いつもながらの手堅い実証の一方で、ザワザワとしたさざ波が大波につながっていくという、ある種の実験的な社会史にもなっている。また秀吉後継者問題が社会的にも非常に大きな関心事になっていたこともよくわかる。欲を言えば、秀次切腹をめぐるどうでもよいように思える説についてはちゃんと批判していただきたかったが、そこも著者の慎重な姿勢が反映されているのだろう。ようやく某仕事の目処は立った。あと二月締切の書評があるのだが、そちらは全くの手つかず…。