wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

油井大三郎『避けられた戦争』

その後、大阪に戻り、ポイント狙いの新刊書を購入して大荷物で帰宅。そういうわけで電車読書のほうも久しぶりに片付けることができた。書店で見かけ、副題の1920年代・日本の選択をみて少し意外に思ったが、著者の名前で衝動買いしたもの。新科目「歴史総合」にも中心的に関わっており、その関係や新憲法制定にも関わった鈴木義男の孫という自意識(TV出演していて驚いた)も後押ししたと思われる。中身はヴェルサイユ条約から満州事変までの、日米英の対中政策の展開をたどり、ウィルソン流の「新外交」への対応して、破局にいたらなかった可能性を探ったもの。結論として1925年から27年にかけて英米が対中政策を「帝国縮小戦略」に転換した際に、幣原も不平等条約改正に応じることで、排日運動が緩和された可能性。1930年5月の中国の関税自主権承認時に満州利権の一部留保した場合の二つ。後者は可能性が低いと認識されているが、そもそも満州利権を手放すという選択ができたとは思えない。やはり日露戦争の「勝利体験」と「犠牲」がその後を規定しており、日露戦争が避けられ「満韓交換」で決着した可能性まで遡らないと別の道は困難だったのではないか。なおあとがきの資料提供・引用文献の確認はとんでもないビックネーム。著者の後輩といえばそうなのだろうが・・・。

筑摩書房 避けられた戦争 ─一九二〇年代・日本の選択 / 油井 大三郎 著