wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

八鍬友広『読み書きの日本史』

本日は沼島で資料調査、当方が論考で使った資料の現物が確認でき感動。撮影がちゃんとできていれば改めて紹介したいところ。ただ本当にあるかどうかの不安と三宮6:35発バスに間に合うよう起きなければならないという意識から熟睡できず、往復のバスは爆睡。それでも読みさしの表題書を読了。日本における読み書きの教育において明治まで往来物(往復書簡形式)による実用知識の習得におかれていたこと。近世社会の特質により村請制の担い手が、都市・村落、中央・地方の差は著しく、地域によっては10%程度で識字率が世界一だったという言説に根拠がないことが示されたもの。新書形式にしては文章が硬く、一般の学部学生レベルでも難解に感じられそうなという欠点はあるが、当方にとっては興味深い図版もあり有益で、西欧におけるキリスト教文化との関わりとは異なり世俗的だというのも興味深い(「文章」という表現が真宗と関係ないのかは少し気にかかるところだが・・・)。これらの点は地下文書としての売券・帳簿の普及度を考える上でも重要な視点。

読み書きの日本史 - 岩波書店