wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

平野千果子『人種主義の歴史』

本日は組合の雑用でお出かけ、老朽化した印刷機に悪戦苦闘しもろもろストレスがたまるが、それでも読みさしの表題書を読了。著者はフランス植民地の専門家(お名前だけは存じ上げていた)だが、大航海時代から20世紀までの「蛮勇を振るっ」(あとがきにある編集者の提案)た通史。さすがに濃淡はあり、アメリカ合衆国・日本に関しては見知ったものも多かったが、啓蒙思想・「科学の時代」など論説の丁寧な紹介と位置づけは大変勉強になり、モンテスキューの黒人奴隷観など秋の講義にも有益。それに関して、著者が石母田正モンテスキューにおける奴隷制度の理論」(1947)を肯定的に評価しているようにみえるのも興味深い。また「ナチの思想には先立つものがあり、ナチ独自のものはないというのが歴史研究では共通理解」とのことで、その前史の全体像も概観できる。なお20頁にわたる参考文献一覧があり、洋書に日本語タイトルが付されているのも、当方にはありがたいところ。

人種主義の歴史 - 岩波書店