wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

酒井啓子『9.11後の現代史』

この間の電車読書の備忘。タイトルと著者名(著名なイスラーム研究者)にひかれ、衝動買いしたものhttp://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884594。時系列ではなく最初に「イスラーム国」(著者の表記)が取り上げられ、その直接的原因となったイラク戦争、さらにはその引き金となった9.11へとさかのぼり、中東問題の核心にあったパレスチナ問題が後景に退き、イラク戦争後の中東における「イチジクの最後の一枚の葉」と思われていたものがはがされていく過程として、その混乱した様相が解説されており非常に有益。ブッシュの対テロ戦争により「イスラエルの支援者」から目に見えるラスボスに躍り出たアメリカと、それ故にオバマの政策転換が引き起こしたサウディアラビアの軍事大国化などの混乱。地域の大国としてのイラン・サウディ関係が「宗派対立」へと転化する諸相。「イスラームのカリフ国家」ISと「ユダヤ教徒のための国家」イスラエルの類似性。「悪魔化」と「空中戦」による混乱の加速など、全体状況がわかりやすく、サウディ・カタール・イエメンなど個別の動きについてもいろいろ勉強になった。今年度の講義は9.11が最新で中東情勢の中心はパレスチナ問題。ただすでに受講者には実体験ではなくなってしまっており、状況の変化を踏まえて来年度はもう少し先にすすめることも考えなければならない。土曜日に帰宅すると父親は実家で動けなくなっており、救急搬送され入院。恐らくこのまま寝たきりになるのだろう。半月ちょっとで全てが変わってしまった。締切原稿も穴を開けてしまうことになるか…。