wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

太田出『中国農漁村の歴史を歩く』

今週の試験は採点終了。一つは最初2回・最後5回が対面で残りはリモート、もう一つは全リモートだったが、できはイマイチ。やはりリモートと対面論述試験はそぐわないのかもしれない(前者も問題選択はほとんど対面)。やることは山積みなのだが、気力が萎えておりとりあえずタイトルにつられて購入していた電車読書の読みさしを読了。10章立てだが、テーマは四つ。①中国地域社会論と戦前以来のフィールドワークの振り返りで、研究状況がよくわかる。②福建省農村における実践例で、一見一つの村に見えるも微妙に距離を置いた集落から構成されており(多層的共同体とでもいえるか)、その成り立ちを後から移住してきた有力氏族ともとの氏族との関連から読み解いたもの。興味深いのだが祭祀のみで生業について触れられていないのが不満。③太湖流域の水上民について、自由な漁業が許されている地帯と出蕩銭を支払わなければならない高級魚の漁場があり、その推移を清代・民国期・共産党による集団化政策とたどったもの。これも興味深いのだが、漁民が採った魚の販売についての区別も聞き取りが必要だったのでは。④日本住血吸虫病(中国・フィリピンも同じ)について文献から地誌・共産党による克服の歴史(とりわけ毛沢東の功績とされている)・新型コロナ対策でその経験が呼び起こされていることをたどり、実際に現地で活動していた人々のインタビューを紹介。江蘇省血吸虫病防治研究所が主導的役割を果たしている「一路一帯」構想におけるアフリカでの対策が進出する中国人のためであると批判。ジェトロを引用するなど日本の対中政策寄りでそもそも本書のテーマとそぐわないように見えた。

京都大学学術出版会:中国農漁村の歴史を歩く