wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

瀬畑源『国家と記録』

もう10年ばかり概説系の講義は歴史学にとっての史料の持つ意味をベースにした通史で、最終回は「近現代公文書の史料学」。官僚の自宅持ち帰りによって判明した事項・敗戦時の公文書焼却などに触れた上で最後は時事ネタで終わり、過去を知る上での史料の役割について総括している。はじめたころは警察裏金・核密約などだったが、現政権になって秘密法から始まり話題に事欠かなくなり、今年はモリカケだった。そういうこともあって参考文献にあげている著者の最新作も読了。今回はイラク日報・モリカケなど時事問題が前半で、後半は宮内庁宮内公文書館アジア歴史資料センター・著者が関わった安曇野市文書館など前向きの動きも紹介しながら、公文書の管理・保存・公開問題が論じられている。最後には三木由希子氏との対談「情報公開と公文書管理の制度をどう機能させるか」が収録され、韓国などの先進的な制度も紹介されておりいろいろ勉強になった。現政権が継続したままだと来年度は「桜を観る会」になりそうだが、それだけは勘弁してほしいところ。

国家と記録 政府はなぜ公文書を隠すのか? (集英社新書)