wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

平瀬直樹『塩田の村「有光家文書」の中世的世界』

本日は千里山、史料講読は四人まで減ってしまい人との接し方の下手さを改めて実感、来年度は講義科目のみになるが、そちらのほうがまだ向いているか…。電車読書のほうは文書の中身が面白そうだったので衝動買いしていたもの。所蔵者から「有光家文書」と呼ばれているが、有光氏が入ってくるのは戦国期からで「正吉郷八幡宮宮司家文書」がふさわしいとのことで、しかも肩書は立派だが規模からいうとせいぜい荘園鎮守レベルの文書。そこから1点の絵図と23点の文書が選択され、六つのテーマにあわせてそれぞれ写真・釈文・現代語訳・解説をつけて紹介されている。文書は難解で判読されているが意味不明、もしくは文字があるが釈文が記されていないものもあるほど。ただ内容は大変興味深く、鎌倉末の絵図とそれを非常に詳細に説明した文書がある、人身売買文書がまとまってある、想定される逃亡先として権門高家・神社仏寺といった一般的なものだけでなく、船之乗下・市町之辻等といった表現がみられる、三輪流神道関係の文書、などいろいろ勉強させてもらった。ただ絵図の段階で塩田は機能不全となり、その後は水田化されるということなのでタイトルはやや疑問。

塩田の村: 「有光家文書」の中世的世界