wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

志垣民部著・岸俊光編『内閣調査室秘録』

本日は実家の荷物整理に出かけ、読みさしの電車読書をようやく読了。最初はスルーしていたのだが、いろいろ話題になっているのを見て衝動買いしたもの。著者は東京帝国大学法学部から学徒出陣し、戦後復員して「雇」として文部省に入り、初代内閣官房調査室長村井順に誘われ、学者対策を担当する第五部で活動。その際につけられた日記をもとに委託研究という名目で資金を提供した127名など、その実態が整理されまとめられたもの。歴史関係は岡田英弘木村尚三郎林健太郎といった予想通りの面々で、社会学者・文化人類学者・心理学者が多数みられるのも、何となくそれらの分野をいかがわしく思っていたので、違和感はなかった。また佐々淳行若泉敬らが東大土曜会時代から後援されてきたことや、編者がまとめた原発人脈など、戦後日本の方向性に影響力を持つとともに、大学内では全共闘系の話題がほぼみえず一貫して共産党対策が重要視されていたこともよくわかる。なお著者は「進歩的文化人」が戦争協力をほおかむりしたことに不信感を持ち、いわゆる「左の全体主義」への対抗を使命感としつつ、戦前回帰的な思考は有していないようだ。著者の父と共産党の上田・不破兄弟の父は近しい関係にあったようで、鶴見俊輔GHQのパージ関係の資料を提供し、1978年には55歳で自らの役目は終わったと感じ一線を退いたという。そのあたりが最晩年になって情報を開示したことにもつながるのだろうが、組織的にも強大化した内閣情報調査室は現在はどのような活動を行っているのだろうか。内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男 (文春新書)

なお書庫設営のため本引っ越しは年末になりそうだが、実家売買を依頼していることもあって、最低限のものを選んで来週新居へ移すことになる。ただ10年ほど前に大々的に処分をしたらしく、子供の時にみた記憶のある母の若いときの記録・写真、少し高めの皿や漆器などは全く見当たらなかった。さんざん当方は何も引き継がないので自分で死亡届を出して、一切あの世に持って行ってくれと言い続けていたためだろう。さすがに当方が生まれてからのアルバム類は残されており、少し迷ったがそれは残すことにした。