wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

石川九楊『漢字とアジア』

本日は枚方一回目。昨年より受講者が多く、またまたPCトラブル、帰りのバスに間に合わず帰宅が19:00を回り、受講者の提出物300枚以上に手を付けられないまま今に至る。10月始まりになったのはありがたいのだが、100分はやはりしんどい。そんな中で電車読書の備忘はまたまた講義用の衝動買いものhttp://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480435347/。タイトルと副題の「文字から文明圏の歴史を読む」に惹かれてしまったのだが、中身はいまいち。漢字の特質と周辺社会の受容のあり方を探るという構想は理解できるものだが、もともと書史の専門家がそれを広げて歴史に踏み込んだため、当方にとっては目新しくもない歴史書になってしまった。とりわけ渤海アイヌなどは書すら残しておらず、単に著者の習作的な歴史像に付き合わされるだけ。なお民俗学的な「原日本」論を排して、歴史的に諸民族国家と文化の成立をみるという構想自体は間違ったものとは思わないが、原著が2007年筑摩書房刊行にも関わらず、1997年筑摩新書の村井章介本も参照されておらず、アイヌの叙述などはそれ以前のステレオタイプにとどまっているのも問題。なお講義のほうは14回への圧縮が結局できず、20世紀を短縮するしかやり方はないようだ…。