wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤信弥『古代中国王朝史の誕生』

引き続き電車読書の備忘。タイトルと1月の新本屋によるタイミングとポイント消費の関係で衝動買いしていたもの。過去をどのように認識し、どのように記述するのかという問題について、甲骨文字・金文中心の春秋時代までを歴史認識、「春秋」が成立する戦国時代から前漢の「史記」までを歴史書歴史観という主題を立てて、叙述したもの。出土文字資料が多数発見されるなか、同一事象に対する複数の評価を紹介しながらこの問題を追及している。甲骨文字段階から竹簡が存在したこと・紀年法から年号の誕生・「焚書坑儒」の実態(始皇帝初期の政策ではなく、書物の散逸の理由がそれに求められた側面も)・説話の転化(始皇帝の出生譚には元ネタあり)など、いろいろ基礎的なことを知ることができたのは有益。

筑摩書房 古代中国王朝史の誕生 ─歴史はどう記述されてきたか / 佐藤 信弥 著