wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

内藤正典『トルコ 建国100年の自画像』

引き続き電車読書の備忘。同時購入した3冊本のうち、講義順で最後になったもの。とかく西側諸国から非難されているトルコ・エルドアン政権について、建国以来の矛盾と西側のイスラムフォビアから読み解いたもの。フランス・ライシテをモデルにしたような世俗主義を軍部が担保し、経済は混乱状態にあった中での、イスラム主義政党の台頭。都市スラム状況を解決して支持を得たエルドアン政権に対して、軍部が非民主的手段で世俗主義を擁護し西側が支持、EU基準の改革が進められる一方で頑なな加盟拒否、オスマン帝国解体の一方でイラク北部の石油利権のためという第一次大戦の戦後処理で後景化されたクルド問題が、湾岸戦争以後に欧米の注目を浴びる状況、それに反発するとNATOが防空システムを引き上げロシアに接近するとまた非難。まさに欧米のダブスタの矢面に立ち続けることを強いられた国で成立した政権という性格が浮き彫りにされている。今度のガザ空爆への対応で欧米の「人権」意識が白日にさらされることになったが、それを図らずも予期するものともなった。結局ドイツなどは反ユダヤ主義イスラムフォビアに変わっただけようにもみえる。

トルコ 建国一〇〇年の自画像 - 岩波書店