wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『菜の花と人間の文化史』

本日は枚方3コマ、朝の電車が遅れていて焦ったが何とか接続バスに間に合い安堵。そんな中で書店で見かけ衝動買いしていた表題書をようやく読了。副題の「アブラナ科植物の栽培・利用と食文化」と類似の科研の成果発表物のようで、編者は「人文情報学・考古学・歴史学」専攻と、「植物分子育種学・植物生殖遺伝学」専攻という、他に余り類例をみない学際研究。ナタネ・ハクサイ・キャベツ・カラシナ・カブ・ダイコン・ワサビなど身近な野菜は全てアブラナ科植物で、別個体との交配でしか受粉しない「自家不和合性」という性格をもっているとのこと。それに関わるゲノム系の論文が3本・コラム1あり、アジア各地および日本の歴史的展開を記した論文が8本・コラム2、学校教育・研究蓄積に関わる論文2本で構成される。日本中世史研究者も一人加わっており、文書および説話については大体こんなものかという感じだったが、仏教関連は当方は全く目配りしておらず仏事における大根の利用などいろいろ勉強させてもらう。なおこの分野の最大の争点はごま油から菜種油への転換をどこにみるかというもので、それが明確になる近世の直前についてはおこなう価値のあるテーマ。近郊農業については意識はしながらほったらかしにしており、改めて刺激になった。

菜の花と人間の文化史―アブラナ科植物の栽培・利用と食文化 (アジア遊学235)