wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

「ある精肉店のはなし」

本日は午後15:20から4種類目の後半(前半と問題は変えてある)の試験(実受験者18名)。火曜日の試験の採点が進んでいないのだが、某同業者からの突然のメールでご教示頂いた表題作をみるタイミングを得たので十三に向かう。電車賃150円をけちるため地下鉄中津駅から歩いたのだが、十三大橋に出るポイントを通り過ぎてしまい早足で30分歩くことになりあせりながら(帰路は20分で戻れた)、何とか12:00の上映時間に間に合う。いわゆる部落差別とも深く関係しているが、映画のHPhttp://www.seinikuten-eiga.com/で地名・家族の実名も紹介されているのでここでもネタばれとともに記す。貝塚市東地区は、20年ほど前に中世の獣骨がまとまって出土したことで研究者には知られるそれ以来続く村だが、そこに七代続く屠畜を生業とした家があり、ある時期からは肉牛飼育から精肉販売まで一環経営を行うようになったという。しかし2012年3月に地区内の小規模屠場の閉鎖が決定され、その最後の一年に密着したドキュメンタリー作品で大変よかった。まず家族それぞれが個性的で魅力的。小学生高学年から父親の命令により屠場で動かないよう足持ちをさせられ、結婚後もホルモンづくりをとりしきる太い腕をした長女、水平社宣言を取り出す理論派で運動にも携わる長男、愛媛県のやはり同様の境遇出身で女工として泉州にきた昔は暗かったという陽気な長男の妻(馴れ初めは語られなかった)、牛飼いを担当し太鼓づくりの復活を実践する自由な次男、差別で学校に行かなくなり字が読めず、とかく暴力的だったとされながら何かとふり返られる亡父(獣魂碑に祖父の名が刻まれており村内でも有力家系だったようだが)、一度も会わずに嫁に行かされ、亡夫の仕打ちをふり返りながら「結婚などするものではない」とカメラに語る母、何れも人生の深みを感じさせる人たち。またストーリー展開も巧みで、歴史をさりげなく入れながら、夏の盆踊り、秋のだんじり祭(昭和26年から出すようになったとのこと)、皮なめしから太鼓作り(たたきながら皮をのばしていくというのは初めて知った)、全く無駄な部分を出さない牛の解体、長男の次男の結婚式(さりげなく妻の親が相手の実家の家業で「気づいた」ことがせりふにある)などがテンポよくみせられていく。作品として大変よくできているとともに、昭和50年代までは泉州では和牛の飼育・取引が盛んに行われていたことを初めて知るなどいろいろ勉強にもなった。明日はお座敷で大山崎なのだが雪の予報。ちゃんと電車が動いてくれるだろうか。