wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

河村昭一『中世の播磨と清水寺』

1月の某研究会で手売りされており、住吉社との相論など気になることもあり購入したもので、今週の電車読書で読了http://www.ebisukosyo.co.jp/books/history_harima-kiyomizu.html。平安から織豊期までの清水寺の歴史について、「権門寺院を別にすれば、西日本の寺院文書としては屈指の文書群」と評価される中世文書480点に加えて、近世の寺誌などに引用されている中世文書を駆使してその通史が展開されている。文書点数だけなら大阪府内だけでも勝尾寺観心寺はそれより多く、「屈指」とまでいえるかかは疑問だが、中世を通じての豊かな歴史像が示されている。住吉社との関係についてはやや不満も残るのだが、基本的な流れは確認できた。また法道にはじまりより推古天皇行基祇園女御池禅尼神功皇后坂上田村麻呂など、時々の必要に応じて膨れあがっていく縁起の操作も興味深かった。また造営事業・お買い物帳など最近気になっている史料の分析もあり、改めて確認しなければならない。少し意外だったのが古代から利用されているにもかかわらず、造営材木が自給されており、山林資源をめぐる近隣村落との相論も戦国期まで降るところ。畿内よりは200年は遅れており、その相違がどこからきているかは検討の必要がある。