wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤彰一『歴史探求のヨーロッパ』

本日はルーティン姫路、兵庫県に転居したことを改めて実感する一日でもある。往路は三宮まで座れないこと、再来週の講義準備のため次のものに進む必要もあって、表題書を読了、著者の修道院シリーズの最終巻。ルネサンスの影響を受けた文献学の展開と、その頂点としての1681年に出版されたジョン・マピヨン『文書の形式について』の意義が詳述。同書は『ヨーロッパ中世古文書学』として訳出されており表題だけは知っていたが、書体・形式を集成することによって、偽造と誤写・誤読による改竄を区別するなど、非常に高度な史料批判を達成していたことがわかる。しかしデカルトによる方法的懐疑を軸とする自然哲学の衝撃は、存在論的真偽とは異質な考証的学問を押しつぶしてしまい、啓蒙史学が君臨することになり、マルクス主義もその延長線上にあるという。そのため啓蒙主義の影響がフランスほどではなかったドイツで考証学歴史学が最初に講じられたとのこと。当方はマルクス主義的全体史と考証は両立すると認識しているが、文系的学問に対する偏見の根源がここまで遡るというのが理解できた。

歴史探究のヨーロッパ-修道制を駆逐する啓蒙主義 (中公新書)

佐藤貫一『復刻版刀剣鑑定手帖』

本日は新年初姫路。結局は自転車で最寄りのJR駅まで走るのが、もっとも合理的で、以前よりは家を出るのが30分遅くなった。ただ座るチャンスは三ノ宮しかなく、10月の資料調査に出かけた際に購入し、引っ越しから読み継いでいた表題書をようやく読了。以前に紹介した本間順治著と同系統の流れなのだが(中に本間氏の特別寄稿がある)、大きく異なるのは「マッカーサーの刀狩り」を経験したのちの1955年刊行だということ。そのため冒頭で「日本刀の悲劇は二十世紀において、なおかつ刀剣が武器として戦陣に動員されたという軍の非科学性に起因する」と述べ、財団法人日本美術刀剣保存協会設立までの経緯が述べられている点が興味深いところ。また後半は入札鑑定の心得と練習問題で、それ自身が刀剣界の戦後の歩みを示しているもの。

書籍案内 | 日本美術刀剣保存協会

正月は完全独り身で、火曜日に学生の質問を受け付けたのが久しぶりの会話。ただ半頁削らなければならないことが本日発覚。レポート処理も含め仕事は山積み…。

播磨赤松史研究の現在

昨日手元に届いた『歴史と神戸』58巻6号(通巻337号)1~7頁に掲載。依頼を受けたのが10月末で、提出が11月24日というやっつけ仕事。成り行き上断りにくかったので『兵庫県史』完結以後の自治体史・報告書の史料編の特質についてまとめ、自らの職務に強引に引き付けておちをつけたもの。その後は編集とメールで校正のやり取りを2回ほどしてあっという間に刊行。中身はありませんが、年明けに落ち着いてから転居案内がてら関係者には送付させていただきます。本日で年内の外仕事は終了。家族もいなくなったので、明日で家の整理を終え、5日までは原稿書き。大晦日になにか書くかと思いますが、みなさまよいお年をお迎えください。

インターネット開通しました

本日開通しました。ただようやく200箱の荷物を開け終えたところで、日常生活に復旧しておりません。さらに仕事とやっかいごとが重なり、土曜日まで物理的余裕がない状態です。引き続きご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い申し上げます。

本間順治『日本刀』

本日は枚方3コマ、今更ながら「レポートって何」という受講者が複数いて驚かされる・・・。そんな中で電車読書は、昨年から業務の都合上で手を出しているため1939年初版本を復刊を契機に購入していたもの。古刀・新刀という歴史的展開、それぞれの評価についての刀剣史の基本的枠組みはすでにこの段階でできあがっている印象。鎌倉期を優品としつつも、古墳出土のものから大陸の影響も踏まえ、俵國一の冶金工学の成果も取り入れるなど、全体のバランスはとれておりその点では学術的。その一方で「軍刀の選び方」との項目がたてられ、実戦使用が想定され、「北満や蘇満国境」といった酷寒の地での選択など、時局を反映し、軍人勅諭をうけた「身命を鴻毛の軽きにも比した我が古武士」といった表現もみられる。日本刀 (岩波新書)