wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

須藤護『木の文化の形成』

4月に衝動買いをしてしまい、ようやくローテンションが廻ったため読了する。樹木の種別の利用方法、南会津里山をめぐる習俗、木工生産と夏場と冬場で場所が異なる居住の様相、木材の伐採・運送・加工、漆器と木地、吉野における桶・樽生産の特質などがまとめられている。著者は建築出身で民俗学専攻とのことで、フィールドに裏打ちされたさまざまな事例は興味深く、加工技術についての説明もわかりやすい。その一方で歴史については考古学の成果から縄文・古墳時代の論究がされ、次は完成された近世中期以後に飛び、書物およびフィールド調査の成果が示され、あちこちで「どのように形成されたかはわからない」という文がみられる。やはりその間を埋めることは、歴史学(考古学および文献史学の総合)にしかできないのだと改めて認識させられる。近世に卓越した林業地帯となる吉野について、本書で紹介されているような技術水準は、依拠した成果が述べる近世城下町が基点とは到底思えない。本願寺の材木調達・秀吉の花見の意味、それ以前の室町期にこそ理由が隠されているはずで、それを見出さなければならない。http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624200794 雑用帰りの電車内でとんでもない失態を演じてしまう。体力が回復せず注意力が非常に散漫になっている。土日にこもったにも関わらず原稿も数枚進んだのみ。