wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『毛吹草』

仕事の帰りに天王寺古書店で見つけて、400円で購入。状態はさほど良くないが、絶版本としてはそれほど高くない価格http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/30/4/3020010.html。ここ数年で大阪の古書店事情は暗転しており、かつて双璧だった梅田東は店をたたみ、難波の店も回転率ががた落ちになった。諸分野の新刊書が並んでいた扇町も高齢の夫婦が引退したようで、雰囲気も悪くなった、そのなかで天王寺だけがよく健闘しているといえ、2冊購入したうちの一つ。『毛吹草』でよく知られているのは諸国名産を列挙したところで、少しめくってみたが、山城の数の多さには目を見張るものがあり、中世との関係をじっくり分析しなければならない。また摂津には中世とつながる「遠里小野油」が記され、「堺北庄」が含まれているのも、大和川開削以前で興味深いところ。そうした内容もさるところ、初版出版年月が1943年12月というのにも驚く。校閲責任者新村出はすでに京都大学を退官していたとはいえhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%9D%91%E5%87%BA、息猛が『世界文化』事件で治安維持法に引っかかるなど当局からもマークされていたはずである。そのなかで、時局めいたことを一切記さずに、広辞苑ばかりでなく、こうした関連事業にも邁進していたことには感心させられるところ。*教壇に立つ身としてウィキペディアには否定的なのだが(学問水準が保障されていない)、年譜情報としてとりあえず参照した。