wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

池谷和信編『日本列島の野生生物と人』

書店で二週スルーした上で購入したが大失敗。琉球大学出身ながら、「近い将来、やんばるに置かれた米軍の北部訓練場が沖縄へ返還される可能性も高まっている」などという大甘な認識のもと、上から目線で自身の調査成果はみられないにもかかわらず、「地域住民から民俗知識を収集する作業を通し、現代なりの森林と住民との関係を再構築する必要がある」とまとめたもの。「現状の環境条件の中で、人間が労力とエネルギーを投入せずに維持される自然が成立できていればよい」というテーマそのものを否定するもの。「人と魚との付き合い方には、現在と異なるさまざまな制約があったのではないだろうか」とまとめた博士(歴史学)という肩書きを持つ研究者など、読むに堪えないものが少なくなかった。またページ数が限られているのにテーマが多すぎて概説にもなっていないものもある。しかも執筆者は何れも中堅より若い研究者で、今後のこの分野はどうなるのかと思う。そのなかで地域の生業の多様性と植生との関係を示した篠原徹「環境民俗学からみた人びとの暮らし」、樹木それぞれの用途と使い分け・言語化のあり方を示した内海泰弘「九州山地の植物利用」は興味深く読むことができた。地域の具体性に即して、環境と生業との関係を丁寧に論じることこそが、この分野の発展につながるのだと思う。http://www.sekaishisosha.co.jp/cgi-bin/search.cgi?mode=display&style=full&code=1471 今日は尼崎関連の研究会。みんなで史料を読み討論することで、たくさんの疑問とともにかなり理解が深まった。このような機会は貴重。