wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

松方冬子著『オランダ風説書』

後期は一つ対外関係史のシラバスを書いたこともあり購入し、火・水の電車内で読了。近世の日蘭関係史をオランダ風説書の変遷から跡づけた通史で、研究書『オランダ風説書と近世日本』を下敷きにしているらしく、手際よく整理されている。貿易独占を図り他国を排除しようとするオランダの意図、風説書を作成する長崎通詞の思惑、幕府中枢と長崎奉行のズレ、といったそれぞれの交錯が示されている点は興味深い。ただし主要な史料として利用されているオランダ長崎商館のものが、どうして本国に多数残されているのかについては言及が欲しかった。オランダ東インド会社は本社を持たない連合会社で、長崎はアジアの拠点であるバタフィア(本書ではこう表記、一般にはバタヴィアか)の下位に過ぎない。その中で「日本商館は際立って文書の伝存状態が良い」P88のは、どういう事情なのか気になるところだ。なお表紙帯の「彼らは何でも信じる」というのは、内容とそぐわず極端すぎる。http://www.chuko.co.jp/shinsho/2010/03/102047.html 土日に出かけていたため久しぶりの休日にも関わらずだらだらしてしまい、なかなか仕事が進まない。