wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

並木誠士『日本絵画の転換点 酒飯論絵巻』

本日から六甲台第4クォーター開始。教室が代わりPCのピン・ケーブルが反応せず焦ったが、ぎりぎりで別の接続ができ、事なきを得る。受講者の大半はご新規さんだが(第三クォーターで嫌われたわけではなく、履修登録は最初からされていたらしい)、別のテーマなので資料作りにも逐われることに。そんななか電車読書は以前にタイトルに惹かれ衝動買いしてしまった表題書を読了http://www.showado-kyoto.jp/book/b286162.html。日本絵画史を平安中期の「やまと絵」成立から後を「絵巻の時代」とし、室町後期から菱川師宣までを「風俗画の時代」とし、その転換点に狩野元信作という「酒飯論絵巻」を位置づけたもの。その論拠となるのが①絵巻という形式ながら詞書と絵画表現は分離して絵画単独で自立していること、②画面が同時代風俗の描写に徹しており、調理のような裏に向ける眼差しをもっていること、③同様の図様が後続の多数の作品に引用され、模本も非常に多く伝存しているというものである。前から気になっていた絵画で、正本と模本の関係、詞書きの存在など全く意識していなかったので、その点では大変有益。かつて博物館で正本にあった箸を写し忘れた模本が、それに気づかれず紹介されていたこともあったようで、注意しなければならない点。ただ絵巻という形式と、風俗画というジャンルをごっちゃにするのは疑問で、風俗画として著者が紹介しているものを単純にくくれば「屏風」のほうがしっくりくるのではないか。また②の特徴についても、同時代に題材を採った絵巻も少なからずあり、「病草紙」などもある種のリアリズムの局地とも思え、もう一つ納得できないところ。巻頭カラーがあるとはいえ、やや高い買い物だったか…。プリンターが印刷不良になった。せっかく正規インクを入れ替えたばっかりなのに、ダメージが大きい、