wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

青木敬『土木技術の古代史』

本日は枚方。行楽客はだいぶ減ったが、相変わらず三扉車で待っている乗客がそこそこ、常連客を優遇してくれているのか京阪も改善する気はなさそうだ。電車読書のほうは、何となくタイトルに惹かれ学会で衝動買いしてしまったものhttp://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b309188.html。前期古墳の墳丘の築造の仕方が東西で異なっていること、後期古墳になってようやく近畿地方の工法が東日本にも恒常的に用いられるようになること、初期古墳の大きさ重視から後期古墳が東アジアの潮流を受けて墳丘の高さ重視に転換すること、飛鳥期に南朝百済系統の版築技術がもたらされること、7世紀前半に隋の版築技術がもたらされること(著者は遣隋使と関係すると評価)、7世紀後半に南朝百済系統の版築の簡略形が創案されるとともに、北朝新羅系統の基壇構築技術がもたらされること、後者は8C中頃に都の寺院や諸国の国分寺などで採用されること、多様な技術と系統論が体系的に示されており勉強になった。とりわけ東西の古墳築造技術が異なるというのは、来年から少し講義でも採り入れる必要がある情報でありがたい。なお版築技術について著者は官による独占管理され、行基の弾圧の背景とするが、その点はやや疑問。そもそも大規模な官衙・寺院以外に用いられるものではなく、民間が模倣できるような汎用技術とは異なっているのではないか。とはいえ全体としては興味深く、著者が課題としてあげる中世への連続と断絶、中世における新技術についても明らかにしていただければありがたいところ。採点のためのまとまった時間がとれないまま。やはり有給休暇を使うべきか…。