wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

石川明人『キリスト教と戦争』

昨日読了の電車読書の備忘。来年度の続く講義の関係で衝動買いしてしまったものhttp://www.chuko.co.jp/shinsho/2016/01/102360.html現代日本でイメージされがちな「愛と平和」の宗教としてのキリスト教の実態について、ローマ・カトリック教会の戦争の定義、プロテスタントの動向、聖書の記述、初期キリスト教の活動、中世キリスト教文化と「軍事」モデル、日本のキリスト教徒の活動などを紹介し、キリスト教がいかなる戦争をも否定しているわけではないとして通念を否定する。現代アメリカの従軍チャプレン制度、ブッシュ二代目に象徴されるアメリカの「回心」「ボーン・アゲイン」文化と正戦思想、戦前日本軍から現代自衛隊にまで引き継がれるコルネリア会の存在など、個別には興味深い指摘があったが、終章の「愛と宗教戦争」は「人はなぜ戦争をするのか」からはじまる、問題をやたらと拡散させただけのどうしようもないポエム。著者は宗教学専門ということだが、それならキリスト教の布教活動のもつ意味、よくイスラームに対して「コーランか死か」と言われるが、むしろキリスト教のほうが歴史的にはそれに近い行動を続けていたように思える。また異端に対する弾圧も他の宗教に見られない苛烈なもので、そのへんに単に宗教と戦争というだけではないキリスト教独自の問題があるはずで、その分析を期待していたのだが…。