wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

なにわの海の時空館

1990年代前半、大阪では関西国際空港開港に合わせて大規模な湾岸開発が進められるとともに、国際集客都市構想なるものがあり、その具体化として多数の博物館が開館した。しかし関空景気はバブルと消え、高層ビルはテナントが入らず、巨額の負債を抱えることになった。一方の博物館は各部局単位で建設されたため、威信を懸けた豪華な箱物が出現する一方で、運営体制は貧弱で相互が連携して企画を組むなどの努力もなされなかった。そのなかでも港湾局が運営した大阪市立海洋博物館(なにわの海の時空館)は、金に飽かせて超豪華施設を建設した一方で、専門の学芸員がおかれないなど歴史研究者の評判は悪く私も一度も訪れたことはなかった。そうしたなかで登場した前大阪府知事橋下徹は頓挫した湾岸開発の再開を主張し、幽霊ビルとなっていたWTC世界貿易センター)を購入して第二府庁舎(東日本大震災で大揺れしたことで有名、南海地震関空とともに壊滅するだろう)とし関西州の実現をぶちあげた。しかし近畿他府県の首長からは全く相手にされなかったため大阪都構想に転じて、大阪市長となりカジノ構想を掲げている。なにわ筋線の実現・湾岸高速などほとんどは焼き直し(もしくは塩漬けになっている土地所有者の救済)に過ぎないのだが、それに目新しく見せるために血祭りに上げられたのが時空館で(他の施設も攻撃にされされているが、これには別の意味合いがあるものと考えられる)、3月10日に閉館されることになった。本日夜に中世史専攻の大学院生2名が研究職に採用されるという信じられないバブルなできごとを祝うことになっていたため、午後に初めて博物館を訪れてみた。閉館を惜しむ親子連れとともに、恐らくたまたま来た外国人もいてそこそこ賑わっていた。展示内容は近世大坂舟運を軸としたもので、意外としっかりした印象を受けたが、開館時からデータが更新されている兆しはみられなかった。ただパネル・ジオラマ(偶然にも幕末南海地震津波被害範囲をカバーしたもの)・復元模型・史料複製など使えるものは多数あり、せめて有益に活用されることを望みたい。写真左は檜垣廻船の実物大復元だが破壊される予定。右がそれを覆った展示施設の外見で受付から海中トンネルで向かうという巨費を投じたもの(3月3日夜作成、4日一部修正)。イメージ 1イメージ 2