wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『季刊東北学第28号 特集地震・津波・原発』

昨日書いたような事情で電車読書が進んでしまい、夏の頂き物を本日読了http://www.kashiwashobo.co.jp/cgi-bin/bookisbn.cgi?cmd=d&isbn=978-4-7601-4019-0。発行奥書が昨年8月1日で、本文から察するに4月末までには書き上げられたもの。歴史学民俗学社会学の論考が多数占めるが、ある種の高揚感がにじみ出た文章が並んでおり、震災直後の生々しさが書き手に強い影響を与えたことが感じられる。なかでも入間田宣夫「自然災害と歴史学」は自らのこれまでの研究を反省する弁で満ちあふれたもので、その衝撃がうかがえる。一昨年に多賀城石巻・松島を廻ったぐらいしか接点のない当方も、直後はそれらの情報に釘付けになっていた。しかし一部の書き手の予想通りというべきか、昨今の風化の度合いは驚かされるばかりで、原発以外は全くこの話題は消えてしまったようだ。これは新自由主義ばかりになった政治の世界だけではなく、昨日の学会でも同様で、もはや何のアピールもなかった。自らも全く無力だが、人と自然の関係を都市から考えるという課題だけは失わないようにしたい。集中講義のレポートで驚かされたのが、近世において日本海側からも薪炭が大量に輸送されている点で(大坂への供給地としての土佐・南九州は念頭にあったが)、エネルギー史は是非ともやらなければならないテーマだろう。