wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

川島浩平『人種とスポーツ』

本日は昨晩からの悪い予感が的中してしまい、2限の講義を終えると警報が出され午後は休講になる。来週から2限と3・4限で進度がずれ、しかも補講も必要になるという最悪の結果。その後の台風の進度から見てもたいして影響はなく、全く迷惑な警報だった。電車読書のほうは相も変わらずの衝動買い本。アメリカ合衆国の黒人スポーツの歴史を、黒人の身体能力は白人より劣り女性的と評価されていた20世紀初頭以前、人種分離主義体制が確立することで黒人のスポーツ選手の活躍が例外的とみられていた20年代から、むしろ「原始的特徴」ゆえに優越するという言説の登場する30年代、第二次大戦後の人種統合と黒人プロスポーツ選手の活躍、NBANFL所属の黒人選手は高率を続ける一方で、MLB・ボクシングなどはむしろ減少傾向にあるなど、「ベースボールは白人のゲーム」など社会的意識に規定された現状が示され、スポーツへの執着がもたらした負の傾向(学業の軽視・黒人=暴力イメージ)が指摘される。その上で黒人内部での大きな偏差(長距離のトップ選手の大部分はケニア高原部でイギリス植民地に10年抵抗したナンディ出身者で、小学校まで通うのに10㎞以上のかかったグループの出自)、国家の政策(近接する砂糖植民地が陸上のジャマイカ・野球のドミニカという対照的姿に)などをふまえた上で、「黒人アスリートの優越」の内実をふまえるべきだと主張される。アメリカ史を黒人スポーツの位置づけから見たものとしていろいろ勉強になり、個別のエピソードも興味深かった。マイノリティーのスポーツ・芸能の問題は日本の在日研究でも位置づける必要があるテーマで、現代の社会構造を考える上でいろいろ可能性が感じられたhttp://www.chuko.co.jp/shinsho/2012/05/102163.html大阪市の敬老パスの有料化が維新の会と公明党とのあいだで合意されたというニュースが飛び込んできた。直接の利害関係にない個別の政策にいちいちコメントするつもりはないが、何より腹が立つのがマスコミの「~億円の削減効果が見込まれる」という報道である。パスそのものが発行されるならその費用は変わらず、バスの運行本数が変わらなければ経費が「削減」されることもない。「増収が見込まれる」と報道すべきで、あまりにもひどい日本語の使い方。