wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

徳川林政史研究所編『森林の江戸学』

ここ数年は山関連に関心があり、新刊書で見つけ一回目は見送ったが結局は購入。ところが読む前に天王寺古書店で1000円引きで売られているのを発見してしまったという曰く付きのものhttp://www.tokyodoshuppan.com/book/b97267.html。前半は概説編で豊臣期から徳川初期の都市開発と乱伐、それ以後の規制・植林・輪伐などの林政政策の展開、明治林政への連続と不連続(森林管理局の一部には近世文書が保管・利用されていたらしい)、第二次大戦後の「拡大造林」とそれが破綻した現代の森林荒廃までの林政史がまとめられる。後半は基礎知識編で、それぞれ5頁程度で48項目が記され、生態学と法制度をまとめた日本の森林、林政史をまとめた森林の保全と育成、技術史をまとめた伐木と運材、流通と市場、領主による御用材生産、領民による材木生産、村の生活と森林に区分されて解説されている。巻末の索引と合わせて辞書として利用可能で、全体像をコンパクトに知ることができた。また気になっている山国や久多の低価格売券の意味についても重要なヒントを得ることができ、その点でも有益だった。少し残念とはいえ、新刊でも買う価値はあったといえる。それにしてもノドの痛みは相変わらずで、何とかならないものか。