wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

奈良国立博物館「解脱上人貞慶」ほか

本日は3daysチケットの二日目を利用したためいつもの淡路廻りではなく、梅田廻りで京都へ。余裕で座れるつもりが辛うじて補助いすを確保できただけで、ついていないと思っったが淡路では超満員に。行楽客に遠足の高校生まで乗っていたため、梅田から乗ったのは正解だったようだ。講義を終えた後は、格安でチケットを手に入れていたこともあり、奈良へ向かい上記展覧会を見学するhttp://www.narahaku.go.jp/exhibition/2012toku/jokei/jokei_index.html。鎌倉期南都の戒律復興運動の先駆者である貞慶の没800年を記念したもので、仏画・講式など鎌倉期のものが多数並び、関係のあった興福寺信円、高山寺明恵、重源のものも含めさすがというところ。なかでも不勉強で全く頭の片隅になかったのが、笠置曼荼羅に描かれている貞慶建立の木造瓦葺きの十三重塔で、少し調べてみると後醍醐の兵火で焼失したらしい。図像で見る限りかなり巨大な建造物で、普通に建てたら法勝寺八角九重塔よりも大きくなるはずなのだが、建築史で研究はあるだろうか。またいつもの特展よりも展示スペースが余っていたため、東大寺宗性や凝然、西大寺叡尊のものまで常設展として並べられており、鎌倉期の南都改革派を総ざらえした構成になっている。そのうえ「この奈良博はストイックで、アクティブです」という開き直りのキャッチコピーにあるように、非常に空いていて、専門家の解説付きの数十人の団体を除けば、数えるほどしか客がおらず見放題というのもありがたい。帰路はふと思い立って十数年ぶりに学園前で下車して大和文華館に寄るhttp://www.kintetsu.jp/yamato/exhibition/collection.html。こちらもものはさすがなのだがコレクターの美術館ということもあって伝来がちゃんと記されていないのが残念。室町の周文の水墨画、近世には前田家が所蔵していたという元代の絵画など、もとはどこにあったのか気になるところ。うららかな陽気で一人廻るのは少しさびしいところだが目の保養にはなった。