wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

山泰幸・川田牧人・古川彰編『環境民俗学』

古書店でたまたま見かけ、タイトルと何人からの大物執筆者の名前と、何よりも定価の約1/4という安さに惹かれて購入したものだが・・・、期待していたものからすると大外れ。レビューとして紹介されているのはオーソドックスな環境民俗学なのだが、編者の関心はむしろそれを脱構築して、「伝承」を未来へと向けるベクトルへ読み替えることにあるようだ。そのため取り上げられているのは環境に対する民衆知のようなものではなく、かつてとは異なった現代生活における環境との関わり方で、イヌイトといっても機械化された生活の中でアイデンティティとしての「生業」を営むもので、川漁も釣り人目線で捉えられ、猿退治伝説による町おこしや、イベントとしての水田漁労などが論じられている。さきの「生業」という用語の読み替えや、それ自体前近代の実態というより近代以降の視点からの評価ともいえるマイナーサブシツテンスの生業論すら経済効率性に終始してしまいプレイとするほうがラディカルだという主張などは、その最たるものといえる。そのうえイヌイト語の語りを直訳するとあまりにも長くなるからと現代文で要旨が示されるなど、フィールドの生の声を伝えるというより論者のポストモダン的思考が長々と記されているものが多かったのも不満なところ。どういう研究をしようが勝手だが、もう少し異なったタイトルが付けてもらえれば無駄な買い物をしなかったのだが・・・http://www.kyoto-gakujutsu.co.jp/isbn/ISBN4-8122-0012-1.htm。雨が降って今夜は少しは涼しくなった。大学の授業も15%削減されるべきなのだが(12回時代から考えると30%増で給料はほとんど上がっていない)、そういうそぶりを見せるところはないようで、あと一月がんばらないといけない。授業の準備も終わっておらず、いただいたものの礼状も滞ったままで申し訳ありません。