wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

「水都大阪と淀川」

今日は仕事終わりと史料読み研究会の間に時間があったため、大阪歴史博物館で開催中の「水都大阪と淀川」http://www.mus-his.city.osaka.jp/を見学する。HPに出品目録も掲載されておらず余り期待せずに行ったのだが、近世の地図類は思いの外充実していた。なかでも興味が引かれたのが寛文期に作成されたという「城州・和州・河州・摂州・江州巡検川筋絵図」で、淀川・大和川水系について嵯峨(大堰川)・琵琶湖(瀬田川)・笠置(木津川)・多田(神崎川)といった上流部の山(石川上流のみ目立った山表現がない)から河口部までを大判の地図で表現されており、まさに自身の研究領域が示されたもの。近世後期のものは以前に見たことがあるが、17世紀にさかのぼるものは初めてで、すでにこの段階で水系全体を捉える認識が成立していたことは興味深い。図録も購入したが、残念ながら1頁分に押し込められているため写真が小さく文字注記の判読は不可能、いくつかは現物を見て筆写したが時間がなく書き残しが多数出てしまった。夜の研究会でこの絵図を含む篠山藩の地図史料が歴史地理研究者の解説で出版されることになったという情報を知り、それが待たれるところである。史料読みのほうは、報告の後の討論のなかでみんなで解釈を出し合って読んでいるうちに当初とは思わぬ方向に向かったが、史料に真剣に向き合える時間はまさに至福の時といえる。やはりこういう研究会はありがたい。