wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

博物館展示3件

今日は大阪市交通局のノーマイカーフリーチケットディ(一日600円で乗り放題)だったこともあり、通例の史料読みはやめて午後は博物館巡りをした。非常勤先を出てからまず京都市バスで30分以上揺られて、京都国立博物館「高僧と袈裟」を見学するhttp://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/101009/tokubetsu.html。前日の榎本著にも取り上げられている渡来僧・渡海僧を袈裟という観点から取り上げた展示会で、客は一作品に一人ぐらいで流れているため困難なく観覧することができた。法然・一遍といった著名な絵巻を袈裟の場面に焦点を当てて展示するなど、ここ数年の京博の優品主義とは少し違うマニアックな展示会だったためだろう。目を引かれたのが中国で制作された袈裟の豪華さで、技術力と併せてまさに唐物として人々の目に映ったことが実感できるもので、見た価値はあったといえる。続いて京阪で天満橋に戻り地下鉄で天王寺大阪市立美術館「住吉さん」http://sumiyoshi.exh.jp/へ。こちらは文化果つる大阪にしては京博以上の人がいたが、作品を見るのに支障が出るほどではなかった。後醍醐綸旨などよく知られた文書を開いて展示しているだけだと思ったら、掛け軸状で上に朱の鳥居と「住吉太神宮」の文字があり、康正2年12月11日付の材木輸送勘過状が記され、ど真ん中に「右京大夫朝臣」の文字と細川勝元の花押が据えられている「作品」が展示されていた。文書内容も初めて知ったのだが、それ以上に興味深いのがこの「作品」の機能で、輸送船の旗として用いられていたか、もしくはその利用を前提とした原本の可能性がある。船の旗としては鎌倉期の得宗船や戦国期の村上水軍と関わるものがよく知られているが、これについては不勉強で初めて知った。その他によく知られた住吉・四天王寺屏風の他に天橋立・東山・賀茂競馬とそれぞれセットとなった近世の屏風も展示されており、風俗が描かれていたため図録を購入することに。最後にあべの橋から大阪市バスで浪速西四丁目まで行き大阪人権博物館「大阪のキタとミナミ」http://www.liberty.or.jp/exhibition/extra_exhibit/index.htmlを見学。特展は一人すれ違っただけで、ビデオスペースにだけ何人かの客がいた。HPには中世の古地図とあったがよく知られた近世の考証図のみで、後は小さな展示スペースに近世のトピックを入れ込みすぎ。悲田院集落の略図などは興味深かったが(位置比定できないものか)、青物市場・蔵屋敷などの史料をここで展示すべきかは疑問で、それよりも天満墓所・梅田墓所などの情報がほしいところ。図録は同館の以前のものと同じく文章主体で資料写真が小さすぎて、スキャンで取り込めそうになかったため購入せず。当初は時間的にきついかと思ったのだが、何とか3館を駆け足ながら巡ることができ、バスで地下鉄動物園前まで戻り無事帰宅。