wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

有馬哲夫『CIAと戦後日本』

本日で前期(某大学は春学期と呼ぶが)の講義科目は終了。来週の試験ウィークを前につかの間の休息となる。そういうわけで電車内読書もしばらくはお休み。本書を購入した時点では念頭に現代公文書史料論があったのだが、すでに講義は終えてしまっており、後期の戦後東アジア史で利用できるかどうかと言うところ。内容は米国立第二公文書館で所蔵されている「ナチス戦争犯罪者、日本帝国政府公開法にもとづく第二次公開文書」(通称CIA文書)から、50年代前半の日本政治をめぐる重光葵・野村吉三郎・正力松太郎緒方竹虎などの動きを明らかにしたもの。内容は興味深く戦前・戦後の人的連続性の濃厚さと、アメリカへのすり寄りには暗澹とさせられる。ただし新書版ということもあって史料引用がほとんどされず(写真はそもそも公開されず?)、結論のみが述べられているため実感がわかない部分もあった。また鳩山一郎の「北方領土二島返還」論を米がつぶしたのも有名な話だが、重光の動きを焦点にしているためかえってわかりにくくなっている。おそらくCIA文書では現れないだろう天皇周辺の動きも含めて、まだまだ未解明な点が少なくないと感じられる。http://heibonshatoday.blogspot.com/2010/06/cia.html