wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

竹中千春『ガンディー』

そんなわけで7日からは毎日自宅と実家を往復する日々となり(泊まったのは通夜のみ。やはり夜は一人になりたい…)、ようやく本にも手を伸ばせるようになった。秋の講義のこともあって衝動買いした表題書の備忘https://www.iwanami.co.jp/book/b341731.html。読み始めたのは金曜早朝の姫路行き電車待ちだが、文章が大変リズミカルで最初から引き込まれてしまった。さすがの車内は睡眠に宛てたが、帰路と舞子でのバス待ちでもわずかな明かりを求めて読み進め、ここ数日も陰鬱な気分を晴らしてくれるものだった。内容は子ども時代・イギリス留学を経て南アフリカでの覚醒・インドに戻っての運動というように、その人間的弱点を含めた生涯と、ユニークな行動が解説されている。とりわけ他のエリート弁護士からインド独立を志向した人々とは異なり、農民運動に声をかたむけ、貧しい低カーストの家にも宿泊するという行動形態は彼のみで、民衆から「神」としてあがめられる存在であったこと。ただ高カーストの歓待を拒否したことによる軋轢、菜食主義・断食などといったインド的行動が、逆にムスリムに受け入れがたくなったこと。逮捕を辞さない戦闘的非暴力と睡眠3時間で人々の話を聞くという姿は、家族を全く顧みるものでなかったこ。暴力の連鎖を阻止するため最後まで行動し続けたこと。などその生涯の輪郭と植民地インドの複雑な状況がよく理解できた。以前読んだ概説と比べジンナーの評価が低いような印象も受けたが、副題に「平和を紡ぐ人」とあり、戦後インドについてはガンディー暗殺者の系譜をひくヒンドゥー至上主義の動向のみ触れられており、著者の関心が宗教的不寛容による暴力にあるためだろう。