wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

吉田裕『日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実』

本日から姫路。JRは満員用の空調しかかけていないため冷え冷えし、駅に着いたら今シーズン一番の寒さ。年末から体調も優れず危ぶまれたが、何とか乗りきることができた。電車読書のほうは昨日読了した表題書で、いくつかの講義のネタ繰りのため衝動買いしたものhttp://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/12/102465.html。1943年以降の絶望的抗戦期に前線の兵士が置かれた過酷な環境を、具体的に紹介したもので、よく知られた餓死・海没死だけでなく、水圧による肛門から腸壁を破る水中爆傷、体当たり特攻が爆弾の威力を逆に弱めたこと、高い自殺率と自傷者、動員兵士の体力の低下、虫歯・結核の蔓延、戦争神経症、戦力増強剤としてのヒロポン、靴・飯盒などの装備の不備などが示される。その背景として白兵戦中心の軍事思想、軍の制度的欠陥、後発資本主義に伴う技術的遅れがあげられ、マラリア覚醒剤など戦後の後遺症についても触れられている。叙述は分かりやすく、あえて加害の側面を押さえたことで、初心者にも取っつきやすく、参考文献としても上げるのにも最適。せめてこれぐらいは日本人の一般常識にしておいてほしいもの。