wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

藤田孝典『貧困世代』

今週も月・火はルーティン大学。ただ月曜日の大人数講義が長引いてカード配布ができなかったため、逆にチェックする手間が省けることになった。電車読書のほうは3月の衝動買い本。ネットでも流布しているものだが、商売柄もあって購入してみたものhttp://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883580。まず野宿・不登校と家庭環境から不安障害となり生活保護を受給している女性・ブラック企業うつ病退社・脱法ハウス・母子家庭を脱出して定時制高校に通い18歳になれば風俗店で働けるので生活が楽になると考える女子学生という、著者がソーシャル・ワーカーとして接した5人のケースをあげた上で、著者のいう貧困世代(15~39歳)に対する大人の誤謬に反論、ブラックバイトと高額な奨学金、若年層を意識しない住宅政策の問題点を取り上げ、①新たらしい労働組合への参加と労働組合活動の復権、②スカラシップの導入と富裕層への課税、③子供の貧困対策との連携、④家賃補助制度の導入と住宅政策の充実、⑤貧困世代自らが闘技的民主主義を参考に声を上げる、ことを提案したもの。全体としてよくまとまっており、提案も首肯できるもの。90年代以降の政府の無策がもたらした惨状が、説得的に描かれている。ただ25年におよぶ年齢階梯層を一括りにしてしまうのはやや疑問も。たとえば奨学金すでに高利の返済に苦しんでいる世代は、無償の奨学金を掲げてもその恩恵を受けることはできず、雇用環境もかなり異なっているように見える。世帯形成の有無でも異なり(子持ち・共働きの著者は、いやな言葉を使うとこの世代では「勝ち組」)、それぞれにきめ細かい分析と対策が必要な部分もあるかと思われる。とはいえ当方はこの世代よりもかなり上になるが、貧困層まっしぐらで、もっとも正規雇用層に理解されない(最近も給与アップを求める動きに対して、自分が出すわけでもないのにわざわざ計算して無理というtweetが大量に出回っていた)非正規雇用に身を置いている。やりきれない気分になることも少なくないが、著者が述べるように根本的な発想の転換が望まれるところ。