wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

石橋克彦編『原発を終わらせる』

夏休みに突入ということで、途中で終わっていた東大寺文書の写真帳閲覧のために神戸に向かう。バスに乗るつもりがオープンキャンパスに向かう高校生が大量にたむろしていたため、歩いて山登りになる。大汗をかいたが念のため替えの服を用意していたため何とか助かった。出勤されていたM助教からは自治体史関連で収集されていた山論絵図と近世文書を提供していただき、山田荘についてはちゃんとやらないといけないと改めて思う。東大寺文書も目録から追えて当方の能力で判読可能な文書は一応おこし終えたが、裏まで文書が及んでいるにも関わらずその部分の写真が欠けているため読めそうなのに字が重なってしまって不十分な翻刻しかできなかったもの、雑部の最後に先行研究も利用していない関連文書が目録にはあるのに写真がないものが残った。やはり東京に行くべきなのか(山口県史がしっかりしていてくれたらと、ある感傷を持ちながら八つ当たりしたくなる)。
それはせんないこととして、電車読書は進展して読了したのが本書。いわずと知れた3.11もので、編者は著名な地震学者で著書『大地動乱の時代』(岩波新書、94年8月刊)は大変勉強になった記憶がある(なお中公新書で92年刊の寒川旭『地震考古学』は手元にあるのが95年5月刊の第5版で対応が遅れていたことが分かる)。執筆者はそれ以外に13名で、原子炉設計技術者・原子力情報室など原発問題を追及してきた人々・大学に籍を置く理系研究者・科学技術史研究者・地域経済や地方財政に関わる研究者などからなる(そのほかに鎌田遵「福島原発避難民を訪ねて」というルポルタージュ風の文章がある。聞いたような名前だが大学非常勤講師・都市計画・アメリカ先住民研究が専門だとある)。全体はⅠ福島第一原発事故、Ⅱ原発の何が問題かー科学・技術的観点から、Ⅲ原発の何が問題かー社会的側面から、Ⅳ原発をどう終わらせるか、に振り分けられており、Ⅰについては公表されている情報量の少なさもあって不十分さを感じるところもあるが、それぞれの論点についてコンパクトにまとめられており理解しやすい。とくにT芝が原発推進と撤退の二股企業戦略をとっているのは初めて知り、推進論が鉄板に見える政界・経済界の動きにも注視しておかなければならないと感じたhttp://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1107/sin_k598.html。それにしても体調が優れず、明日は腫れたままの咽を見てもらいに行くことにする。