wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

橋口侯之介『和本への招待』

台風休講が心配されたが、大阪の暴風警報は本日夜に発令で、進路は太平洋岸を西に進むようなので明日の京都南部も大丈夫だろう。そういうわけで本書は日曜日には読了して後回しにしていたもの。第一章は平安時代、第二章は中世の和本の概説で、第三章・第四章の近世の和本と本屋に関する部分が分量的にも内容的にも充実しているが、本屋経営の実態の細かな描写は興味深いものの辟易するところもある。しかし第五章で前近代書物史を正規の<本>と大衆の<草>との対比で捉え、草紙の原点に絵巻物と聖による本の形になっていない説教や唱道を位置付け、その融合として御伽草子を評価、近世における新たな草の拡大と本への昇格の歴史として捉える見方は興味深いものだった。著者は古書店店主として実務経験を持ちながら、大学非常勤にも出講しているということで、両者のバランスが反映されたものになっているhttp://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201001000449。先日のアンケートだがやはり実施者は受講者の半数ぐらいで、匿名ということもあり自由記述には厳しい文章が並んでいた。もっともシラバスを読まずに受講して、思っていた内容とは異なっていて無駄だったといわれても困るのだが。本日の回答者は半数にも満たず新システムを導入した効果は疑問なところ。