wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

かぐや姫の物語

昨日は院生時代の友人たちとの忘年会で、いろいろ話したくさん飲む。それまで時間があったため、本屋巡りと表題の映画にあてる(以下ネタばれ)。画像は大変美しく、湿地の風景まで再現されていたのはさすが。時代考証は原作の古代から平安初期というより、中世の絵巻物がメインで作事風景は「石山寺縁起」そのまま。ただし竹取の翁の家は近世まで降る造りにみえ、棚田の風景も完成されすぎか。幼い主人公と野山をかけめるぐる「捨丸兄ちゃん」は最初は木地師轆轤は新しすぎか)かと思ったが、都で盗みをするのも生業の一つのようで、サンカがイメージされているらしく、成人でも烏帽子をつけていない。月(死の世界)からの使者は「当麻寺縁起」などに描かれる紫雲をそのまま使っていたが、奏でられている音楽が明るい沖縄音階だったのはやや驚き。八年前からすすめられたという経緯もあってか、画像・テーマは「もののけ姫」を強く意識したもので、たとえ差別を受けているサンカとともにであろうと、この世には生きる意味があるというメッセージを前面に押し出したもの。「もののけ姫」に登場する複雑な中間層を切り捨てたことと、ラスト・シーンによってよりストレートに打ち出されているように思えた。土曜日午後ということもあってほぼ満席だったが、席数は多くなく上演回数も一日三回で平日は余り入っていないのかもしれない。観客の年齢層も高くロビーで多数を占めていた若年層は少なかったように見える。このメッセージはどこまで伝わっているのだろうかhttp://kaguyahime-monogatari.jp/。年内の更新はこれが最後の予定で、この間に届き、いただいた論文類を読むとともに、某原稿の書き直しを考える予定。皆様よいお年をお迎えください。