wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

オレンジと太陽

本日午前の授業は院政の成立と白河・鳥羽だったが、カードの内容に唖然・呆然・・・。文学部の講義をどのレベルですべきなのか悩みは尽きない。午後は北山が休館ということもあって久しぶりに四条烏丸で映画鑑賞。「母と切り離されて海を渡った13万人の子供たち。英国最大のスキャンダルといわれる”児童移民”の真実を明らかにし、幾千の家族を結びあわせた一人の女性の感動の実話」というキャッチコピーの作品http://www.oranges-movie.com/。最初の場面を除いて再現映像は使われず、1986年以後の社会福祉士だった主人公が問題を知り、イギリス・オーストラリアを往復しながら、子供に寂しい思いをさせながら夫に支えながら解決に奔走する姿と、強引に切り離された母娘、両国で別れ別れになった姉弟、探偵を使ってまで母親を探す一方で主人公に屈折した感情をもつ男性の物語を軸に、低予算で問題を示した手法はよくできている。その一方で主人公の妨害者として出てくるのは事業に直接携わった教会関係者と、脅迫電話をかけ家を襲撃しようとした男性のみで、両国政府の姿はラジオ報道のみでほとんど見えてこないのは、映画の評価とは別に疑問が残るところ。主人公が社会福祉士を休職して立ち上げた移民トラストと両国政府の対応。児童移民が組織的に実施されていた段階での下層や私生児の出生に対するイギリス政府の姿勢と白豪主義に基づき白人移民を必要とするオーストラリア側との関係、そもそも70年になぜ中止されたのか、彼らの矯正を善とするキリスト教会の相互関係(実際は神父による男児のレイプが告発されているが)、13万人の男女比(何が必要とされていたのか)など、政策の背景についてはいろいろと気になるところ。