wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

「禅林寺文書ー売券の観察から」

本日手元に届いた、春田直紀編『中世地下文書の世界ー史料論のフロンティア』(【アジア遊学209】勉誠出版http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100753P205~215に掲載。同書は2014年度からはじまった科研「日本中世『地下文書』論の構築ー伝来・様式・機能の分析を軸に」の成果を中間的にまとめたもの。周知のコネで当方も末端の兵隊の一人に加えてもらって、調査に参加させていただいてきた(単に思いつきの放言で攪乱させていただけの気もするが…)。もともとは別の史料群を取り上げる予定だったのだが、当方および文書寄託先の事情で充分なものを仕上げることができなくなってしまい、和歌山県海南市の調査先でたまたま気づいた、売券の案文が結構作られていたにもかかわらず、編年体の刊本ではほとんど無視されているという「素朴な発見」をまとめたもの。事情をわかっている方にとっては当たり前の事実なのだろうが、もう少し中世史研究者の共通理解としておくことにも少しは意義はあるかと思った次第。昨年11月にあわてて仕上げたため、恥ずかしい誤りも多かったが、編者にいろいろ指摘していただき何とか形にはなったと思う。当方は原本調査の現場をほとんど経験していないばかりか、十全な古文書読解力も持たないまま史料論に片足を突っ込んでしまったため、職人的研究者と活字から考える研究者の認識のズレを強く感じてきた。今後とも日本中世史研究が存立できるのなら、この問題はちゃんと俎上に置かれるべきものだと考える。