wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

藤澤房俊『地中海の十字路=シチリアの歴史』

本日は千里山の定期試験、教養181+留学生2、史料講読12、例年ほどではないにしろ採点は大変。そんな中で読了したのが、秋の講義のこともあって衝動買いしてしまっていた表題書https://http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000323091ギリシア・ローマ時代から第二次大戦後までのシチリア通史で、ローマ・イスラーム・ノルマン人支配と展開し、ノルマンによるシチリア王国を栄光の時代とし、その後のフランス・スペイン系王家の支配と、大航海時代以降の地中海交通の衰退期を「長くて、深い眠り」と評価し。統一イタリアにおける果たした役割にも関わらず経済的には「植民地化」されたと認識され、マフィアの成長、ファシズム体制との微妙な関係、解放期の独立運動が反動と化し、特別自治州としての位置と公共投資も大きな成果が上がることなく、逆に「北部」が「独立」を志向している現在までが概観される。一通りの知識は得られるのだが、ある段階まで農業生産力が高く評価されているのに、風土としては「火の雪が降る」夏の苛酷さが強調され、貴族支配の強固さが、ある段階からマフィアに変わるなど、個別の政治支配ではなく全体として社会がどのように展開してきたのかが、いまいち理解しにくかったのが残念…。